原田千秋 (株)日立製作所ソフト調達部部長代理
「成功事例ー日立コーポレーション」



ただ今ご紹介に預かりました日立製作所の原田と申します。私の勤めておりますところは、ソフトウェア事業部という、日立は非常に大きな組織ですけれども、その中のソフトウェア事業部というところ、そこでは基本ソフトだとか、オープンミドルソフトだとか、いわゆるプロダクトベースのソフトウェアを開発しております。そこで私共は、だいたい8年になるんですけども、インドでの開発を続けてまいりまして、現在までに約800位の大小様々なプロジェクトをインドに委託して開発してきたという次第でございます。

そういうことで、タイトルはサクセスストーリーとなっているんですけれども、実際にある特別なものをサクセスストーリーとして取り上げるのではなくて、やった中にはうまくいったのもあるし、とてもうまくいかなかったものもあるということで、そういうところを分析しましていいものはどういうものか、悪いものはどういうものかというところを私の経験から整理して、皆様に少しでもお役に立てればということでこのお話をさせていただきます。

ここはこういう1から5まで、こういう順番でお話したいと思います。
最初の方はなぜインドかというところでやろうとしたのですが、すでに皆様ご存知なのでさっととばしていきますのでちょっと我慢してください。

まずインドのソフトウェア会社の特徴、高い技術、もう一つ特に言えることは、日本に対して友好的だと、そして柔軟で、前向きな対応をしてくれるということで、我々にとって考えられるのは良きパートナーとして、長期の取引関係が可能だということを実感しております。優秀なソフトウェア技術者たちは、これはもうすでにナスコムのところから十分にお話がありましたので、ちょっとスキップさせていただきます。

次に何故インドなのかと、やはり我々にとって一番重要なポイントとして国内開発コストとの比較ということで、これは単なるモデルを示したので、この数字自体に意味があるのではなくて、本当に形としてこんなもんだという意味で書いてあります。国内での開発、例えば200というコストとして考えた場合に、それと同等のものをインドで作るとすると、例えば100でするとしましたら50%なんですけれども、これがそのままコストメリットになるわけではなくて、実はインドに発注するということで我々の方で発生する費用がどうしてもかかるということで、この絵ではオレンジの部分で示してありますけれども、そういうものを付加して、そうした上でも更に充分なメリットが得られるという、そういうモデルの絵を示したものです。

それからここでは何故インドなのかということで、非常に重要なファクターであるインドの技術力について下の絵がありますけども、インドから世界へという絵を描いております。

それから次にトピックを変えまして、インドにアウトソースするということで、それの課題、やはりいろいろ難しい問題とかありますので、それをちょっと紹介したいと思います。

インドの活用は難しいという先入観が、我々が実際プロモートする際にもみんなこういうことを思っているという。

どういうのがあるかといいますと、開発ソフトウェアの主要な部分を任せるようなリスクは持ちたくない、非常にリスクを嫌って恐いことを敢えてやろうとしない。

そのファクターをちょっと考えてみますと、1番に品質や納期が不安である。2番目には過去に失敗例を聞いていると、何かとんでもない失敗をして、あんな苦労はしたくないという話。3番目にはこれと同じ話なんですけれども、実際に使っている部署から聞くと、苦労している話ばかりが聞こえてくる、だからこれは嫌だ。4番目には失敗したら結局自分たちでやり直さなければならない、その回復が大変だというような、こんなリスクをみんなそう感じていて、なかなかそのインドを使おうという気にならないような、これを私はあえて先入観と言っているんですけども、こういうのがやっぱり蔓延しているのが事実です。

それでインドに限らず、海外のソフトウェア開発というものを考えた場合にどういう難しさがあるのかということで左側の上に書いてありますけども、だいたいこのような要因があろうかと思います。地理的な距離と、それから実際には仕様書に基づく指示をしなければならない、実は恥ずかしい話ですけれども、我々にとってもこれは完全に定着しているわけではなくてドキュメントで仕様をちゃんと定義して、この通りに作って下さいというような作業の仕方というのはなかなか国内で仕事をしている上ではなかなか身に付いていない。それをインドでやろうとするとすぐさまこういうことをやらなければならない。これは非常に大きな難しさになっている。それから考えの相違と、言葉の壁と。こういうのが海外ソフト開発に起因する難しさだと思います。
それで問題はこういうことで、この左上の4つのファクターが小さなトラブルで、これらのために増幅されるという、ここが最大の海外ソフト開発の難しさだと私は感じております。

それとインドの課題として、簡単に今度はインドソフトウェア会社が抱える課題というものを取り上げてみました。1番に中堅技術者の確保、我々から見てもいわゆる中堅技術者、経験を積んだソフトウェア技術者というのはまだまだ不足しているのではないかと思います。2番目に高離職率が上げられます。3番目にプロジェクト管理能力、大きなプロジェクトを管理する能力あるいは品質、納期の面で日本の我々の要求レベルが非常に強くて、それに耐えられるプロジェクト管理能力というのが、我々はもっともっと要求したいということで、こういうことが課題と考えられます。それで日立の我々のインド活用について簡単にご紹介いたします。

活用上の当初からの課題とうことで8年前に始めた時から、この1番から4番に書かれているような品質のそれから我々ソフトウェア知識と技術を持ってもらうこと、それから通信インフラ、言語標識の克服とういような4つの課題をもっておりました。これで先程の課題を克服して、インド活用を推進していくということで我々がとったアプローチを書いております。まず1番最初には取引先、相手先のベンダーの中に日立の専用開発区域というODCと呼んでいる、これを開設しました。ODCの中で品質保証部門を強化してもらうというようなやり方で、品質管理を強化したこと。それから日立のノウハウの蓄積を図った、それからさらにインフラの整理だとかセキュリティの確保をこのODCを通してやりました。

それからもう一つ特筆すべきは、インドプロジェクト推進室というものを作りまして、これでもって発注元、いわゆる委託開発元の支援をしていった。それでここから成功と失敗の分かれ目という書き方をしていますけども、8年間にやりました経験から成功プロジェクトと失敗プロジェクトの特徴を考察してみたいと思います。こう書いておりますけれども、成功プロジェクト、失敗プロジェクトは非常によく似ておりまして、その特徴をちょっと、簡単に、成功するものについては発注元の体制が強い。それから発注元に情熱がある。迅速な応答をしている。相互に信頼感。失敗する側に関しましてはそれとまったく相反する側に書いてある、そういう状況になっております。
ということで成功と失敗の分かれ目というのは、発注元の姿勢で決まるだろうということで、まず積極的で熱心な担当を割り当て、国内の新規の取引先に初めて発注する時と同じ細心さで望む。それから管理者が出来るだけ現地に行く。将来を支える重要プロジェクトという認識を持ちなさい、そういうことで私が言いたいのは良い循環というか、難しい重要な案件を任せれば、この図にありますようにどんどん良くなっていく、両方が頑張って更に拡大してよくなっていく、それのまったく逆の例が悪い循環、これは最初からリスクを恐れて重要な開発を発注しない、というようなことでいくと最初から失敗するんじゃないかとおどおどしながらやると、本当に失敗してどんどん悪くなるというようなことを示している、ということでインドでのソフト開発の勧めということで良い循環によってメリットを享受しようということを書いています。享受するメリットというのは価格であり技術力であり、開発力である。

まとめですけれど、まずインドはソフトウェア開発大国である。ソフトウェアの海外開発というのは、国内開発と基本は同じです。発注元の姿勢が最大の成功の秘訣であるということで、先程紹介した良い循環というものに入り込んで、メリットを享受しようということで私の話を締めくくらせていただきます。


司会:発注元の心構えが重要ということで、例えば橋を両方から渡る時も、片方に全部渡ってもらうよりは、お互いに半分ずつ渡れば、真ん中で半分の時間で手がつなげるとうこともあろうかと思います。両国のITの技術者のみなさんが頑張っていただければと思っております。約2時になりますけれどもいろいろご静聴いただきありがとうございました。








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