Mr.D.Dvivedi新生銀行執行役員
「新生銀行の変容にインドITはどのように貢献したか」



ご紹介ありがとうございました。みなさんこんにちは。さて、私は榊原先生の例にならって、英語でお話させてもらいます。日本語ではありません。実は榊原先生とは数多くの共通点があると思います。実は彼はインドの企業の唯一の、そして最初の取締役でおられるわけですが、日本人の方々、じつはおそらく日本大手企業でインド出身のCIOは唯一私だけだと思います。ですので、共通点はたくさんあるとご理解いただければと思います。

さて、私は新生銀行に身をおいております。以前は日本長期信用銀行、長銀と呼ばれた銀行です。長銀は日本の工業化において非常に大きな役割を果たしました。ところが、1988年に破綻しました。史上最大の破綻でありました。新生銀行社長の八城は当時引退していましたが、その再生のためにまた呼び戻されたわけであります。私は実は八城社長を手伝うチームの一員でありました。

さて、この新生銀行の再生は大変劇的なものでありましたが、どのような事が行われたのか、どういう形でこれが進んだのか、ご紹介できればと思います。

では、最初にビデオをご覧いただきたいと思います。実は当時日本の銀行業界における消費者の心配の声、懸念の声に社長がどう対応したかということ、また、銀行としてどうやったらより良いサービスを提供できるのか、そうやってどう違う形の銀行サービスができるのかということを紹介したものであります。その際にはITが活用されました。単純な例をあげれば、銀行からお金を引き出す際に、お客様がわざわざお金を払う必要はないと。どうやったら低コストのプラットフォームを提供できるか、これをどう実現できるのかという事をたどったものであります。それと同時にお金を動かす際にどうやったら無料でできるのかということを考えました。したがってこれをご覧いただきたいと思います。また、まだ長銀の業務をあまりご存知ない方々のためにどういった形で長銀が破綻したのかということもご覧いただきたいと思います。さらに、社長がどういう考えを持っているのかというものを示しているものでもあります。13年間の日本での経験の中で、社長は特にインドのITについて非常に関心を持っていて、非常にパイオニア的な形でITを活用してきました。89〜90年当時世界的に知られる前に行われた作業についてご紹介できればと思っております。日本においてこの技術をどのように活用できるのか。これを皆様がどういった形で活用できるのかという事もご紹介できればと思います。それではビデオをご覧ください。

ビデオ映像
「手数料ってさ。通帳とか見ると手数料手数料手数料・・・。ずいぶん払わされているんだよね。新生銀行ならATM手数料無料なんです。新しい手数料でシステムを効率化しその分をお客様に還元しているから、他の銀行でおろしても手数料はゼロなんです。

(八城社長コメント)
会社の経営というのは殆ど変わらないですね。
それは為替の自由化をしたんですね。為替についてはビッグバンの一環として、外国為替はちゃんとやったんです。それ以外はあんまりやってないと思いますね。ビッグバンしときながら、つまりビッグバンをやるには体制が弱くなりすぎたのですね。つまりね、外から第一に、これは日本固有のことだけど、異物が入ってきたみたいな感じを持つんですよ、日本人は。異質な人が入ってきたと。異質を嫌いますよ、とっても。だから同質の人間しか受け入れないんですよ。だから、そういう、外から入ってきて必要な能力、経験を持った人を雇うんだということになかなか踏み切れない。

やはりITの世界でインドはすごくよくなっているのですね。しかもソフトですよ。我々のソフトはですね。ITは自分で、自前で作らないんですよ。インドのソフトで、たくさん使っても一番いいものを、それらの用途に従って、そういうものを持ってきているわけですよ。ですから、そういうことをやりますとね、例えば500億かかるところを50億で済むんですよ。

だからね、やっぱり勝つことを考えなきゃ、現実というのは。中国が出てきて、自分たちでやっているものは、あれは付加価値が少ないんだからどうぞおやり下さいと。で付加価値の高いものは、自分たちがやるんだと考えなければ、経営者に限るわけじゃないんだけど、やっぱり究極の目標をどこに置くかっていうことは最初になくてはならない。目標を達成するために途中でいろんなことがあっても、根本的に究極の目標を見失ってしまい、あるいはそれを出来ないようにしてしまうことは絶対避けますね。修正はしますよ、プロセスで。しかし目標は変えないのです。」

さて私共が新生銀行の基盤作りを手がけた時に、我々の優先課題が何かと言えば、まず最初に、収益の減少を避けたいということでした。また、お客様が離れるのを是非、止めたいと思いました。この銀行はそれまでの約1年半の間、政府のコントロール下にあったわけです。

その後、社長がIT部門に設定した目標は単純なものでした。すなわち、始めはどんなに小さくても、しかし、最後には大きなスケーラブルなインフラを作るかということだったわけです。そして100万人単位のお客様の処理ができるようにということでした。これは達成されました。また、クリエーティブな製品、そしてサービスを提供するということです。

新生銀行、今やほとんどのランキングに関して、例えば顧客満足度においてもナンバーワンです。すなわち、日本そしてアメリカの銀行よりも上にいるという状況であるわけです。銀行の運営を続けながら、そしてインフラ整備しながら、どうやって新規顧客を獲得するか、またどうやって反応の早いシステムを作るかということを考えなければなりませんでした。そして、こういった問題を同時並行して進めなければならなかったわけです。

さて、技術戦略に関しては非常に単純な課題がありました。またアウトソーシングを考えるか、ないしは非常に大きなプロジェクトにするかどちらかでした。ただ、タイムライン、例えば1年というものをみた場合、非常に複雑な銀行を理解するだけで十分時間がかかってしまうと思いました。

従って、どんな製品がこの50年間であったのかを考えると、アウトソーシングをする、そして一つの短いプロジェクトでやるということは不可能でした。ですので、私共は大々的なオプションを考えなければならなかったのです。単純なものでした。すなわち1年前に遡ると、銀行をいくつかの部門に分けるということでありました。100から150のコンポーネントに分けてみたわけです。そして、非常に小さなステップを同時並行で進めたのです。初めは単純な小さなステップでありました。ただそれを、非常に早いフィルターを通してやっていきました。そして社長の設定したターゲットに合っているかどうかを必ず確認いたしました。コスト目標が達成できるのか、すなわちATMゼロ、コストということに合っているかどうかやったわけです。すなわち他の銀行とは違うとお客様に理解していただく上で、これが達成可能な目標なのかどうかということを考えました。新しいお客様、そして既存のお客様に合うものかどうかというのも一つの基準となりました。そしてこれらの方法を見出した上で、今度は物理的に十分な人材がいるかどうか確認しなければなりませんでした。プロジェクトチームを拡大しました。500人の技術者が日本にいました。日本人のエンジニアです。ただ、どうやったら、これをスケールアップするのか、どうやったら短期間で2500人くらいの技術者を動員できるのかということを考えなければなりませんでした。従って、技術力もある、コミットもしてくれるパートナーを探さなければなりませんでした。ただちに動いてくれるパートナーを見出さなければなりませんでした。

この本の絵をご覧いただいております。よくインドの技術について皆さんが口にされるわけですが、実はこの本は90年、91年に出された本です。ここではシリコンバレーからインドにいかにシフトが起きたかということを記述した本です。私は89年にシティバンクの日本代表であった八城さんのチームに参加いたしました。その時に是非今までの研究を活かしたいということでありました。彼は実は10年間にわたって優れた組織というものを見てきたわけです。そこで八城さんの経験にのっとって、5つのパートナーを選びました。一つのパートナーは、これも榊原さんのおっしゃった通りですけれども、まさにインドのベストカンパニーを選んだということなんです。そして必要なビジネス行為を持ち合わせた人を選んだのです。それさえできれば非常に単純でした。問題は小さなものに分ける、そしてチームを動員する、プロセスを考えるという単純なものです。それを日本の規律を持って実行するということでした。ビデオをご覧いただきましたけれども、まさに急激な展開が、そして好転が1年間でできたわけです。この会場にそれらの要素が揃っております。すなわち、この企業の関係者が集っているんです。ですから、わざわざよそに目を向ける必要はありません。小さなステップというのは逆に日本的な方法です。単純な小さなステップ、そしてそれを完全なものにする、そして理解し易いものにするということです。それを組み立てて、他の企業にあてはめることができます。


司会:どうもありがとうございました。ジェイ・デュイベティさんです、ありがとうございました。今お話がございましたけれども、スモールステップからそれを積み上げていくと、ちょっと考えていたんですけれども、アメリカの宇宙飛行士がずっと前に月面に下り立った時に「この第一歩は小さな、スモールステップかもしれないけれども、将来、人類にとって大きなステップにつながる」といったような発言をしていたように覚えております。やはりどの小さなサクセスストーリーでも、積み重ねていって大きなものにしていくということではないかと思います。
それでは、スモールステップかどうか分からないんですけれども、実際に現場でいろいろお仕事をなさっているお二人から、具体的な日常のお仕事に関連したお話をお伺いしていこうかと思います。
それではまず沖テクノコラージュ常務取締役でいらっしゃいます高田淑朗様からお話をお伺いしたいと思います。高田様よろしくお願いいたします。








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