K.K.ジジャスワルインド政府IT省副大臣
「ITに関するインド政府のビジョンと日印のIT協力」



 逢沢外務副大臣、そして外務審議官兒玉様、JETROの塚本副理事長、ナンダ氏、そしてナスコムのアルン・クマール理事、ご列席の皆様、本日はこのような形でこのセミナーに参加出来ることを大変光栄に思っております。
 今回のセミナーは、財団法人日印協会創立100周年を迎える行事でございます。日印協会は、従来からの両国間の協力関係を築く上で、大変大きな役割を果たしてこられました。日印協会が、ITという側面をこの両国関係の中でも特に注目されたということを、そしてこのセミナーが東京のみならず5つの県において開催されるということ、これは大変大きな意義を持っているものと思います。これによりまして、日本全国を通してインドのITの力というものが知られるようになるでありましょう。又、インドのIT企業はこの地域における様々なチャンスというものを重々認識しているものと思われます。
 さて、インドにおけるIT産業の成功が、インドに対する世界のステレオタイプ的なイメージを変える上で大きく貢献致しました。また、このIT産業は、インドのGDP並びに輸出所得に大きく寄与することとなりました。ITそして通信部門はインドの経済の中でも最も躍進している分野でもあります。例えば生産そして輸出もめざましい成長を遂げております。世界的にITに対する設備投資が減少しているにもかかわらずです。生産性の向上において果たしたITの役割、これは政府も含まれているものではありますけれども、政府以外においては更なる貢献が期待されます。
 インドとしては、ITの技術を、例えば農業、生産業、そしてサービス部門に更に組み込んでいきたいと思っております。そうすることで、全般的に経済の効率向上につなげ、そして発展のために配分収支リソースの最適配分を計りたいと思っております。
 大変喜ばしいことに、インドとしては、いわゆるイーガバナンス、即ち電子政府構想を推し進めようとしているのです。これは国レベルのみならず、地方政府においてもしかりであります。政府と企業との関係、そして政府と個人との関係において、大きな改善が見られると思います。やはり、責任の所在が確立されると言うこと、そして透明性の向上というものもなされるでありましょう。このような目的を持って、いくつかのプロジェクトが採択されており、それによって政府と、そして政府がいかに企業そして個人と関係を結ぶかということが変わっていくと思われます。
 インドのIT業界にとって大きなチャンスがあると思われます。それと同時に日本のビジネスパートナーにおいても大きなチャンスが潜んでいると思います。というのは、日本におきまして、イージャパン構想というものが第二段階にさしかかっていると、そして同じような目的を抱いておられると、場合によってはより野心的な目標をあげておられると、いう風に伺っております。まさに、その様な領域において、双方が飛躍するような形で協力出来るという風に思います。
 インドにおけるITセクターの成長は、まさに先見を持った投資によってなされたものです。これは人的資本に対する投資ではありますけれども、40年前、50年前に逆昇るものでありました。
 インドにおける高度な学術センター、例えば工科大学等、そのようなエクセレンスセンターは世界的に知られています。実は私がアメリカの高官とお話をさせていただいたときにこう言われました。アメリカが自分に対する最大の贈り物は、実はインドに於ける工科大学であったというふうにいうのです。というのは、これらの技術センターというのはアメリカの援助をもらってインドで発足したものだからです。そして、これらのセンターの卒業生、実は今回のセミナーに集まっておりますけども彼らがまさに全世界的に彼らしかできない仕事をしている。まさに大きな違いをもたらしている訳です。
 従って、頭脳に対する設備投資がもたらした成果というものは、我々は目の当たりにしているわけです。これを将来においても続けたいと考えております。まさに知的資本がそのような形で形成されるからです。
 ITにおいてはそのような知的資本の役割は大変大きなものがあります。私共は人的資本開発に関して非常に大きなプログラムをこれからも始めることになります。国内の経済のニーズにも目を向けていきたいと。それと同時にインドの知的資本によって受益している他の国々のニーズにも答えていきたいと思っております。それと同時にまだ私共が主要な担い手となっていないエクセレンスの卓越さの領域が残っていると思っています。まさに日本や、そしてその他のパートナーに是非そのような領域においてお力を添えていただき、それらの側面におけるインドの力を伸ばしていきたいと思っております。
 さて、副大臣からそのようなお話が一つありました。すなわち、ハードです。インドに於けるIT業界の成長のパターンを見ておりますと必ずしもバランスのとれたものではありませんでした。今まではソフト、そして輸出というものに目を向けておりました。ところが、国内に於けるソフトというものは、残念ながら輸出向けほど充分伸びていないと。まさにエレクトロニクス、そしてコンピューター等のハードの側面でもまだインドは遅れをとっております。
 日本の業界のこの領域における力とうものは世界的に認知されています。両国間には共通の関心があり、またそれぞれ補完関係にある側面もあるとそれによって相乗効果が生きてくると思います。
 また規制面、そして財政的な構造を見ておりましてもハードを伸ばす上では実はやはりたしかに欠陥がありました。しかし、それを近い将来改善していきたいと考えております。そうすることでインドのハードの部門を、パートナーによる投資などを通して完成されていくものと思っております。
 まさにインドにとって非常にエキサイティングな時代であります。一番先に動くものこそが大きく有利になることになります。日本のパートナーの方々はそのことを自動車業界などの経験からご存知だと思います。この分野が今まで経験した大きな躍進・伸びというものは、インドそして日本のベンチャーが自動車のみならず部品、組み立てなどで形成してきたものなのであります。そして今やこれがグローバルなハブ(軸)にまで育っております。
 ハードにおいても同じようなことが私は起きると思っております。インフラ面の不足、それから規制面での不備、それが全部払拭されつつあります。そして、政府の様々なレベルにおいて、意識をもってこれらの問題に対応しようと思っているわけです。
 私の方からも日本の業界の方々に心から歓迎申し上げたいと思います。そして、是非製造拠点をインドに設けていただければ幸いでございます。
 先程申し上げましたけれども、インドのIT業界は今までは輸出志向でありました。しかも、地域的に限定的なものでありました。要するにインドのIT業界が一番目を向けてきたものは欧米でありました。しかしながら、今やまさに多角化することで将来が切り開けるという意識が芽生えています。喜ばしい事に70以上のIT企業が日本に進出しております。そして、この数字は近い将来さらに伸びるでありましょう。大幅に伸びることでありましょう。
 今までは充分な日本の言葉に、文化に、充分慣れ親しんでいないというような結果がありました。しかしながら、そのような阻害要因を克服するべき努力が行われております。インドでは16の異なる言語を抱えております。ですので、例えば言葉を知らないということ自体けっして目新しいものではないと、簡単に克服できる問題であるというふうに考えております。現在、インドでは日本語を習得することが出来るセンターがいろいろと発足しております。そして、IT業界の関係も日本語を修得するべく、これらのセンターに足を運んでおります。
 私共といたしますれば、インドのIT業界としてある特定の側面において専門的になってほしいと思います。そして専門的知識・分野がなければ、なかなかグローバルなマーケットでインパクトを強く印象づけることは難しいからです。例えばサイバーセキュリティ、バイオインフォマテックスもまた然りです。それらの領域において、私共は充分な力があると思っております。したがって両国間の協力の可能性が大変大きいのではないかと思われます。また私共はワイヤレスの技術、特に4Gの発展に力を注いでいます。というのはまさに4Gが将来の技術だからです。
 しかし、この未来についてはまだ明確には描けておりません。日本の高官の方々とお話をさせていただきますと日本も大変強い関心を4Gに向けた標準化に関して抱いておられると伺っています。是非これに関しても協力ができればと思います。
 さて、一つ大変心強いと思った点があります。すなわち、インドの持つインドの力に関する情報の普及、地方に波及しつつある点です。地方にはまだインドのIT企業が開拓していない潜在的な力があります。電子政府また様々な経済活動のプロセスの改善など、ITインド企業にとって新たなチャンスを生み出すものとなります。それと同時にいかにIT専門家がローカルマーケットに同化していくか、これを常に念頭に置かなくてはいけません。
 やはり、新たにビジネスを立ち上げるビジネス・パートナーシップを築き挙げるというその体力というのは、是非ITのプロフェッショナルの方々に期待したいと思います。今回のITセミナーが成功することを心から祈念しております。そして、この議論がまだ残っている様々な障害というものを是非取っ払っていただければと思います。日本におけるインドのIT企業、そしてインドにおける日本企業の発展のために残っているIT阻害要因が、是非払拭できればと思います。ありがとうございました。


司会:ジャスワル副大臣ありがとうございました。今大臣のお話の中にも、他言語のお話がありましたけれども、インドの方、非常に語学に堪能で、いろんな言語をしゃべれる方が沢山いらっしゃいます。続きまして、ジェトロ副理事長でいらっしゃいます塚本弘様よりご挨拶いただきます。どうぞ宜しくお願い致します。








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