呪縛をとく
(Sapamochanam)


叙事詩「マハーバーラタ」とカタカリについて
 舞踊劇であるカタカリの主な筋書きは、インドの叙事詩である『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』『バーガヴァタ・プラーナ』からとられています。
 ヴイアーサ作とされる『マハーバーラタ』は『ラーマーヤナ』の4倍の長さで、中心となるバラタ族の従兄弟どうしの骨肉相食む戦いのなか、様々な伝説・物語を含む聖典です。
 本日は、『マハーバーラタ』より「ロマンスの花」を上演します。

【作品解説】
 ドリタラーシュトラとパーンドゥはプル王家の兄弟である。兄のドリタラーシュトラは眼が不自由だったので、弟がプル王となる。パーンドゥには5人の息子が、ドリタラ−シュトラには100人の息子がいる。105人の中で最も年上で最も賢いパーンドゥの息子ユディシュティラが王子になるが、王子になれなかった兄の息子ドゥリヨーダナは王位継承を許せなかった。

その後、王国は分離した。兄の息子ドゥリヨーダナはユディシュティラの王国をサイコロの賭けで獲得し、パンダヴァー族を奴隷にする。ドゥリヨーダナの弟であるドゥッシャーサナは、パンダヴァーの共通の妻ドラウパディを宮廷にひきずりだし、王家の人々の面前でサリーを脱がせようとする。しかし、神であるクリシュナが神秘の力で次から次へとサリーをひきだし、ドラウパディの名誉を守った。

ドラウパディはドゥッシャーサナがユディシュティラの弟で勇者のビ−マの手にかかって腹を裂かれて死ぬよう、呪いをかける。また、ドゥッシャーサナの血で髪が染まるまで、髪の毛を整えないと誓う。

パーンドゥの5人の息子達は再びサイコロ賭博で負けたために、12年間を森で暮らし、最後の1年間、誰にも見つからずに暮らさなければならないことになる。
13年間無事に森の中で暮らしたのち、クリシュナのところへ行き、ドゥリヨーダナに頼んで自分たちを王国に返してもらえるようにしてほしいと頼む。


Sapamochanam (呪縛を解く)

 アルジュナは血のにじむ様な苦行をしてシバ神に懇願し、デヴェンドラによって天界にもたらされた武器パシュパタを手に入れました。
 しかし、アルジュナは天界に来て、愛する家族と離れ孤独にさいなまれて落ち込んでいました。ここに世界の激動に巻き込まれた一人の人間の苦境を垣間見る事が出来るでしょう。
 天界きっての美女ウルワシは、アルジュナに夢中になり恋に落ちました。ウルワシは自分のこの気持ちを女官〔天女の召使〕に打ち明けました。この女官は、二人を引き合わせ、アルジュナの落ち込んだムードを壊して彼女に恋するように仕向けました。
ウルワシとアルジュナは、お互いに戯れながら水晶で造られている宮殿の前にきました。アルジュナは宮殿の中を見たいとウルワシに切望しました。
 そこで、彼女は宮殿の中に飾ってある肖像画を彼に見せながら、自分と人間王とのロマンスのことなど、数々の昔話を聞かせました。
 アルジュナはショックを受けました。なぜなら自分が恋に落ちた相手ウルワシは、何世代も前の祖先の妻であった事がその肖像画から分かったのです。
(天女ウルワシは永遠に若くて処女であることが運命付けられていたのです。)
 落胆したアルジュナは、彼のロマンチックな欲情を抑えて、急いで宮殿を去りました。ウルワシが彼を引き止めようとした時、彼は激怒しました。それに腹を立てたウルワシは、彼が2度と女性とは愛し合えないように呪いをかけて姿を消しました。
 アルジュナは必死に祈り、ウルワシの容貌は自分の母のクンティそしてインドラニ(自分の父の妻,義母)に瓜二つであること、愛情ある母親であればいつでも息子の悪戯を許してくれるものだと、ウルワシに呪いを解くよう懇願しました。
 アルジュナのこうした真摯な態度は、彼女の中の母性を引き出しました。ウルワシは母親としての愛情をアルジュナに注ぎ、彼女がかけた呪いを解きました。更に、アルジュナが12年間森に身を隠し、その後自由の身になったあとも敵に捕らえられないように、その後の1年間、彼をナプンムサーカム(半身男性、半身女性)として、身を隠すよう計らいました。
 最後に、彼女は彼を膝の上に乗せ、愛情を込めて子守唄を歌い、彼女の永遠の母性愛を体験する事が出来ました。






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